映画「黄金のアデーレ・名画の帰還」 4

 とても丁寧に作られた映画だと思う。
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 ヘレン・ミレン演ずる”マリア・アルトマン”が、自分の伯母である”アデーレ・ブロッホバウアー”を描いたクリムト肖像画をナチに略奪されたものとして、オーストリア政府に返還を求めたストーリー、
  
 結末は邦題が最初から明かしてしまっている!!!
 原題は”Woman in Gold"、これはウイーンのヴェルベデーレ宮殿オーストリア絵画館で公開されていた時のこの肖像画の名称、本当の名称があるのかどうかは分からないが”アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I”と整理されている。所有権を巡る推移として、この原題にも深い意味があると思うのだが、邦題は更に踏み越えて「黄金のアデーレ」と、現在ノイエ・ガレリエに展示されている名称(”Woman in Gold")までも変えてしまっている。
 このDVDのパッケージの下の”JUSTICE IS PRICELESS”にマリアの気持ちが込められている。
 
 TBS”おはよう一直線”の中でキャスターの生島ヒロシさんは、感動の一作として賞賛していたが、自分はそれほどの感動は覚えなかった。ユーモアも散りばめられた佳作だとは思うし、そういう経緯があったのかと初めて知った。
 よくぞ”ウイーンのモナリザ”をオーストリア政府も手放したものだと、その仲裁裁判所の公正さに感心した。
 この肖像画は最終的には1億3500万ドルでロナルド・ローダー(エスティ・ローダーの息子)がノイエ・ガレリエへのコレクションとして落札するのだが、かつてユダヤ人が所有しナチ政府に略奪・没収された美術品の一つとして収蔵されるのは意義あることだと思う。
 丁寧な作品として「
 
 今、ヴェルベデーレ宮殿オーストリア絵画館で公開されているクリムトの目玉作品は、官能的な「ユディトⅠ」と「接吻」だが、自分としては「接吻」と同時期(1907年)に描かれたこのアデーレの肖像画の方が良く出来ていると思う。
 アデーレの肖像画は1912年にもう一枚描かれているが黄金では無く暗い。
 (参考までに、接吻、アデーレの肖像Ⅰ・Ⅱを並べてみた。)
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